誰でもできる小規模事業者持続化補助金の事業計画書作成を中小企業診断士がわかりやすく解説
小規模自業者が販路開拓で使える小規模事業者持続化補助金。通称 “持続化補助金”。
長い間公募されていて、比較的申請しやすい補助金です。制度の詳細はこちらの事務局HPでもご確認ください。
その持続化補助金申請で作成が必要な事業計画書を誰でも作成できるような方法を解説します。
本記事は、自力で小規模事業者持続化補助金の事業計画書作成にチャレンジしてみたいとお考えの事業者向けです。
事業計画書の構成について
事務局指定のフォーマット
持続化補助金はありがたいことに事務局からフォーマットが用意されています。フォーマットの構成は以下のとおり。
前半パート 経営計画
1. 企業概要
2. 顧客ニーズと市場の動向
3. 自社や自社の提供する商品・サービスの強み
4. 経営方針・今後のプラン
後半パート 補助事業計画
1. 補助事業の内容
2. 補助事業で行う事業名
3. 販路開拓等の取組内容
4. 補助事業の効果
経営計画は「会社の状態」を書くところ
まず経営計画では「会社の状態」を書きます。初めて貴社を知る審査員に、貴社の自己紹介をするものと考えてください。
その自己紹介は少し詳しい内容で、話すと15分程度になるボリュームです。2ページから4ページが理想です。
補助事業計画は「持続化補助金で何をやるか」を書くところ
次に補助事業計画では「持続化補助金でやること」を書きます。経営計画で貴社を知った審査員に、補助金を使って取り組む内容をプレゼンするイメージです。
どんなことをやって、どんな効果があるのかについて、こちらも話すと15分ぐらいになるボリュームです。2ページから4ページが理想です。
全体を通した書くポイント
表やグラフ、図を使って視覚的に見やすく
審査員は短時間で貴社の計画書を読みます。個人差はあると思いますが、15分から30分程度でだと考えられます。ということは音読すると30分ぐらいの内容を、15分程度でぱっと見でも理解してもらえるように作る必要があります。
そのため、表やグラフ、図を使います。量は様々ですが、全体の3割から4割ぐらいのスペースを使っているぐらいが望ましいでしょう。
文章は短く、箇条書きに
審査員が読み込む時間はさほど長くないと予想されますから、文章自体も読みやすい必要があります。
一文が長かったり改行が少ないと読みづらくなり、貴社が伝えたいことが伝わらなくなります。
よって、一文は40字から80字程度、1行から1行半程度が望ましいでしょう。
また、短文を連ねて結果的に行数が増えるようなら箇条書きにしてしまいましょう。
専門的な業界用語はNG
持続化補助金は業種の制限がないことから、あらゆる業種業態の事業者が申請しています。
ところが、審査員は貴社の業種に精通しているとは限りません。
貴社の業種を熟知している可能性は極めて低いと考えて、専門的な業界用語は避け、素人でもわかる言葉を使いましょう。
審査員志向の事業計画書作成を意識
持続化補助金は審査を合格する必要があります。採択率は50-60%です。半数弱の事業者は不採択ですから、審査の点数が影響していると考えて間違いないでしょう。
その審査項目については公募要領に記載されています。よって、「自分なら高得点をつける」という観点を捨て、「審査員が審査で高得点をつけてもらう」ことを意識しましょう。お客様志向ならぬ審査員志向です。
経営計画の各項目では何を書くか
企業概要
■企業名、個人事業の屋号
法人であれば企業名、個人事業主であれば屋号もしくは氏名を明記しましょう。
■資本金
法人であれば資本金額を記入しましょう。個人事業主は不要です。
■代表者名
法人であれば代表取締役の氏名、個人事業主の場合はご自身の氏名を明記しましょう。
■開業・設立年月日
法人もしくは個人事業の設立年月日・開業日を記載しましょう。もしも法人成りしている場合は、個人事業の開業日と法人の設立年月日を記載するといいでしょう。
■本店住所・事業所住所
本店住所を記載します。もしも本店が自宅等で事業所が別の場合は事業所住所も記載します。
■事業内容
事業内容を簡潔に記載します。複数の事業がある場合は全ての事業内容を記載し、補助事業対象となる事業がわかるよう記載します。
■業績
業績の推移を記載します。過去3年から5年が望ましいでしょう。
■ビジネスモデル
一般的に知られている業種でない場合、特にBtoBビジネスは、ビジネスモデルを図解しましょう。自社・顧客・仕入れ先などの関係者のほか、商品サービスの流れやお金の流れを記載しましょう。
顧客ニーズと市場の動向
■市場の動向と特徴
市場の全体像について、市場が拡大しているのか、縮小しているのかを統計資料などを用いて、なるべく数字で示しましょう。ここでは拡大傾向か縮小傾向かは気にする必要はありません。ありのままを記載しましょう。
■顧客ニーズ
具体的な顧客ターゲット像を示しましょう。性別・年代・地域・職業・年収帯など、区分しやすい特徴をはじめ、顧客のニーズの詳細を示しましょう。顧客のニーズとは、「本格的なサービスを求めている」や「安全な商品を求めている」という内容です。
自社や自社の提供する商品・サービスの強み
■自社の強み
ここでは「自社の強み」もしくは「自社商品やサービスの強み」どちらか一方で構いません。自社の強みの場合は、人材面や長年の経営で培ったノウハウなどについて記載しましょう。
■自社商品やサービスの強み
ここでは「自社の強み」もしくは「自社商品やサービスの強み」どちらか一方で構いません。自社商品やサービスの強みの場合は、顧客から支持されている理由から割り出して記載しましょう。
■競合環境
自社と商品やサービス、顧客が類似していて、強く競合として意識している競合他社がどれくらいいるのかを記載しましょう。
経営方針・目標と今後のプラン
■経営方針
経営の大きな方向性を記載しましょう。
例「一度食べたら忘れられないスイーツを徹底研究して商品開発、販売するスイーツ店であり続ける」
■経営目標
経営方針に沿って考えている目標を記載します。目標なので達成・未達成の指標がわかりやすいものがいいでしょう。数字であれば尚良いです。
例)「1年間に10アイテムの新作スイーツを創作し、3アイテムがメディアに取り上げられる」「1年後・2年後・3年後の売上高が、3,000万円・4,000万円・5,000万円を達成する」
■経営課題
目標を達成するために乗り越えるべき経営上の課題を記載しましょう。
例「新作スイーツを創作するために新鮮な果物の仕入れ先を開拓する」「500万円の売上高向上のために販売個数を毎月100個増加させる」
■今後のプラン
経営課題を元に、課題を解決させるためのアクションプランを記載しましょう。
例「果物市場に行き、卸問屋を30件リサーチする。3ヶ月以内に終わらせる」「販売個数を増加させるために、チラシやInstagramでの集客を強化する」
補助事業計画の各項目では何を書くか
補助事業で行う事業名
■補助事業計画名
計画名を読んだだけで、どんな補助事業なのかがわかる名称にしましょう。30字制限があるため、無駄な装飾用語は使わずに簡潔に記載しましょう。なお、採択発表時の採択事業者一覧表に記載されます。
販路開拓等(生産性向上)の取組内容
■補助事業の目的
経営計画の最後で記した「経営課題」と「今後のプラン」を元に、補助事業の目的を記載します。
■補助事業の具体的な取組内容
補助金を活用する具体的な取組内容、投資内容を記載します。審査員がイメージしやすいように画像を使用しましょう。
■実施体制
補助事業を実施する体制を記載しましょう。役割と担当者を表にするとわかりやすくなります。担当者は自社スタッフだけではなく、発注予定の協力会社を記載しましょう。その場合はあくまでも予定で構いません。
■実施スケジュール
持続化補助金の申請から採択を経て、補助事業の開始および終了を記載しましょう。月別にブッロク化したガントチャートにするとわかりやすくなります。
■補助対象経費一覧
補助対象経費を一覧表にしましょう。開発費や広告宣伝費、外注費などの経費費目、補助事業の概要、内訳金額、合計金額を記載しましょう。
■資金調達計画
補助金は後払いです。先に自己資金や借入金で補助対象経費を賄う必要があります。かつ補助金が入金されるまでは時間を要するため、その資金繰りが問題ないことを示す必要があります。
補助事業の効果
■補助事業の具体的な効果
補助事業の具体的な取組内容に対して、どういった効果が出るのかを記載しましょう。ただし持続化補助金の主旨である販路開拓効果である必要があります。販路開拓は集客効果であり、集客効果は数字で示すことで説得力が増します。より具体的に記載しましょう。
■収益計画
上記の補助事業の具体的な効果を元に、簡易的な収益計画を記載しましょう。売上高・売上原価・売上総利益・営業利益を1〜3年分記載しましょう。
■投資効果もしくはキャッシュフロー計算
投資に対するリターンがどれくらいになるのか、投資利益率やキャッシュフローを計算しましょう。しかしながらこの計算は専門知識が必要です。顧問税理士に計算してもらうか、どうしても計算が難しい場合は省略してもさほど大きな問題はありません。
■社会への貢献効果
補助事業を通じて社会に与える貢献効果を記載しましょう。ただし、こちらもどうしても記載が難しい場合は省略してもさほど大きな問題はありません。
事業計画書の作成を通じて得られること
ここまで事業計画書の作成方法を解説しました。しっかりと作成することで採択の可能性は上がります。
販路開拓に3分の2の資金が補助されれば小規模事業者にとってありがたいお話ですから、事業計画書作成は頑張りたいところ。
さらに事業計画書の作成を通じて、自社を客観的に知ることができるのも大きなメリットです。
「人のことはわかっても、自分のことはわからない」と、多くの経営者が言います。
特にテーマが経営となるとなおさらわかりづらくなります。
しかしながら、自社が身を置く市場や、自社の強みなどを知ることができれば、持続化補助金だけでなく、既存事業を伸ばしていく際にも、取引先にプレゼンする際にも、さまざまなシーンで活用できるネタを入手することができます。
よって、この「自社を客観的に知ることができる」のは大きなメリットです。
とはいえ、実際に事業計画書を作成するのは難しい、一人では考え抜けない、資料を作るのは苦手だ、という方は、ぜひ弊所にご相談ください。
佐々木中小企業診断士事務所は、事業計画書作成のプロである中小企業診断士が補助金申請サポートを行います。
従業員0名から10名程度のサービス業の販路開拓や売上向上(持続化補助金)や、新規事業立ち上げ(事業再構築補助金)に強いことが特徴です。
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