インボイス特例併用で最大補助額250万円の小規模事業者持続化補助金「創業枠」とは|申請条件や採択ポイントを解説
※本記事は2023年3月29日に内容を修正しています。
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者の販路開拓や生産性向上に資する取り組みを補助することを目的とした補助金制度です。
条件が該当すれば、創業したての事業者も申請できます。
この記事では小規模事業者持続化補助金の創業枠を活用したいと考えている事業者に向け、実際に採択された事例や、申請の流れも解説しているので、参考にしてください。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金とは、小規模の法人や個人事業主などに対して、販路拡大や生産性向上を支援するための補助金です。
事業者は自ら作成した経営計画に基づいて事業を実施し、持続的な経営に向けた取り組みに関わる経費の一部が補助されるという制度です。
経営計画を作成する過程で、事業の見直しや経営方針の改善も期待できます。
ここでは、持続化補助金の対象者や、対象となる事業や取り組み、経費について解説します。
小規模事業者持続化補助金の対象者
持続化補助金の申請が可能な対象者は、以下の小規模事業者に該当する法人および個人です。業種によって条件が異なります。
・商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く):常時使用する従業員の数が5人以下
・宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員の数が20人以下
・製造業その他:常時使用する従業員の数が20人以下
常時使用する従業員には会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含みません。
NPO法人の場合、適用される業種は「その他」となります。法人税法上の収益事業を行っていることと、認定特定非営利活動法人でないことも求められます。
対象となる事業や取り組み
持続化補助金は、販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援することを目的としています。対象となる事例は次の通りです。
販路開拓の取り組み例
・販促用のチラシ作成、配布
・展示会や商談会への参加
・新商品開発
業務効率化の取り組み例
・店舗改装による従業員の作業導線確保
・会計システム導入による決算の効率化
・労務管理システム導入による人事・給与業務の効率化
対象となる経費
対象となる経費は次の通りです。
1.機械装置等費
補助事業に必要な機器の購入費など
2.広報費
新商品PRのための広告媒体に支払う経費など
3.ウェブサイト関連費
販路開拓を行うためのWebサイトの開発費用など
※単体での申請は不可、補助金額の4分の1が上限
4.展示会等出展費
新商品の展示会出展や商談にかかる費用など
5.旅費
販路開拓を行うための旅費など
6.開発費
新商品の試作や改善費用など
7.資料購入費
補助事業に必要な書籍等の購入費用など
8.雑役務費
販路開拓を行うためのアルバイト・派遣労働者の人件費や交通費など
9.借料
補助事業に必要な設備のリース料など
10.設備処分費
販路開拓を行うための作業スペース確保に伴う設備処分費用など
11.委託・外注費
補助事業遂行に必要な外部委託費用など
小規模事業者持続化補助金は通常枠と特別枠にわけられる
令和3年度補正予算から申請類型は通常枠と特別枠になりました。
特別枠には、賃金引き上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠の5種類があります。
※インボイス枠が第12回公募受付回から廃止され、インボイス特例の要件を満たすことで、通常枠及び特別枠との併用ができる制度が開始されました。
補助率は3分の2で、補助上限額は通常枠で50万円、特別枠で200万円、インボイス特例の要件を満たすと50万円が上乗せされます。
通常枠
通常枠の補助の上限額は50万円、補助率は3分の2に設定されています。
補助率とは、対象となる経費に対して補助される比率を意味します。
先述の「小規模事業者」に該当していることが、通常枠への申請条件です。
特別枠
特別枠は、通常枠よりも補助の上限額が高く、上限額200万円です。
さらにインボイス特例の要件を満たせば補助上限額が50万円上乗せされます。
追加要件に該当すれば申請可能ですが、事業終了時点で要件を満たさないと、補助金が交付されない場合があります。
ここでは、各特別枠について解説します。
賃金引上げ枠
賃金引上げ枠の補助金額の上限は200万円です。
補助率は通常3分の2、赤字事業者の場合は4分の3となります。
追加要件は、事業終了時に事業場内最低賃金が、申請時の地域別最低賃金より30円以上アップしていることです。
すでに達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より30円以上アップする必要があります。
卒業枠
卒業枠の補助金額の上限は200万円、補助率は3分の2です。
卒業枠は、事業規模拡大に意欲的な小規模事業者への支援を目的としています。
追加要件として、事業終了時に常時使用する従業員の数が、小規模事業者として定義する従業員数を超えていることが求められます。
後継者支援枠
後継者支援枠の補助金額の上限は200万円、補助率は3分の2とされています。
将来、事業継承予定のある事業者に対する政策支援が目的です。
追加要件は、申請時にアトツギ甲子園のファイナリストになった事業者であることです。
アトツギ甲子園とは、後継者候補が新規事業アイデアを競うイベントです。
創業枠
創業枠の補助金額の上限は200万円、補助率は3分の2に設定されています。
創業した事業者への支援を目的としており、過去3年以内に特定創業支援等事業の支援を受けていることが追加要件です。
特定創業支援等事業の支援とは、認定連携創業支援等事業者によるセミナーや相談などを指します。
インボイス特例とは
2021年9月30日から 2023年9月30日の属する課税期間で一度でも消費税の免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録(インボイス)を受けていることで、補助上限額が一律50万円上乗せされる特例のことです。
消費税の免税事業者が適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境変化に対応することに対し政策支援をすることを目的とした制度です。
特定創業支援制度とは
条件が該当すれば200万円の補助上限額となる創業枠。その条件にある特定創業支援制度について解説します。
特定創業支援制度とは
特定創業支援制度とは、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を無料で受けることができる制度です。
特定創業支援等事業とは
特定創業支援等事業とは、「産業競争力強化法」に基づき、創業希望者、創業して間もない人を支援するための国・自治体によるサポート事業です。
地域の創業促進により、日本の産業競争力を高めることを目的としています。
国の認定を受けた自治体が商工会議所や民間事業者などと協力して実施しています。
市区町村が創業支援等事業者と連携して策定する「創業支援等事業計画」は、令和4年12月現在1,301件(1,459市区町村)が認定されています。
対象者
認定特定創業支援等事業を受けることができる対象者は、これから新規で創業する人、または創業から5年未満の人です。
メリット
特定創業支援等事業の支援を受けることで得られるメリットは、小規模事業者持続化補助金の創業枠を活用できる他、以下のようなメリットがあります。
・登録免許税が半額になる
・信用保証協会の枠が増える
・日本政策金融公庫の新創業融資が受けやすくなる
・日本政策金融公庫の新規開業資金融資の利率が低くなる
・創業関連保証が前倒し(通常2ヶ月前が6ヶ月前)で利用できる
・自治体の中小企業融資制度で優遇される
・令和3年度補正予算の小規模事業者持続化補助金創業枠で利用できる
創業枠を申請する際の注意点
申請条件を満たしていれば積極的に活用したい小規模事業者補助金創業枠。申請する上での注意点を解説します。
採択審査がある
小規模事業者持続化補助金は申請したら必ずしも採択されるとは限りません。
申請には事業計画書の作成が必要です。
審査の結果、不採択になる可能性もあります。
過去の採択率はおおよそ60%前後です。
よって、事業計画書は有識者の審査員が読んで説得力のある計画を立案する必要があります。
不採択の場合に備えて、補助金をアテにしない資金繰り計画も必要です。
補助金は後払いが原則
採択前の経費は補助対象となりません。
採択されて交付決定通知を受理したら補助対象経費を使うことができます。
そして、事業計画に沿って補助対象経費を使い、全ての納品が完了した段階で補助金を請求できます。
補助対象経費を使ってから補助金が入金されるまで6ヶ月以上かかることもありますので、資金繰りに注意が必要です。
特定創業支援制度を活用できる時期が限られている
認定連携創業支援等事業者である自治体によって、特定創業支援の内容や時期が異なります。管轄の自治体に確認することが必要です。
都道府県の創業支援系の助成金や補助金との併用ができない可能性がある
創業支援を目的とした都道府県の助成金・補助金との併用ができない可能性があります。
例えば、東京都創業助成金は小規模事業者持続化補助金の創業枠との併用が不可能です。
違う補助対象経費であっても、そもそも創業支援を目的としている同一の性質のものなので併用ができないことになっています。
都道府県の創業支援系の助成金や補助金も活用しようと考えている場合は、必ず管轄の都道府県に確認しましょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金の創業枠とは、創業間もない小規模事業者が「特定創業支援等事業」の支援を受けることで申請できる補助金制度です。
インボイス特例と併用することで上限額250万円と補助額が大きい一方で、補助金は後払いが原則なので資金繰りに注意して申請の判断をしましょう。
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